東京の下町・荒川区には、時が止まったかのような昭和レトロな商店街が今も息づいています。都内に残る37の商店街が織りなす本物の下町情緒は、現代の東京では希少な宝物。映画「万引き家族」やドラマ「三匹のおっさん」のロケ地としても有名なこれらの商店街では、失われつつある昔ながらの人情味と、驚くほどリーズナブルな価格の食べ歩きグルメが楽しめます。今回は、特に魅力的な4つの商店街と、そこで出会える絶品グルメを詳しくご紹介します。
荒川区の代表的商店街4選
1. ジョイフル三ノ輪商店街 – 大正時代から続く都電の始発駅
基本情報
項目 | 詳細 |
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場所 | 都電荒川線「三ノ輪橋駅」〜「荒川一中前駅」 |
特徴 | 全長400m、アーケード型全天候商店街 |
歴史 | 大正時代開業(約100年の歴史) |
店舗数 | 約100軒 |
アクセス | 地下鉄日比谷線「三ノ輪駅」徒歩5分 都電荒川線「三ノ輪橋駅」徒歩1分 |
営業時間 | 店舗により異なる(9:00-19:00での営業が多い) |
特別イベント | 毎月11日:弁天セール 夏:縁日大会 年末:歳末大感謝祭 |

名物グルメ&ショップ
とりふじ – 行列必至の惣菜天国
営業時間:10:00-19:30(月曜定休)
地元民から絶大な支持を集める「とりふじ」は、朝から行列ができる惣菜の名店です。看板メニューの「日向鶏半熟卵親子メンチ」は、外はサクサク、中はとろとろの半熟卵が絶妙なハーモニーを奏でる逸品。一口かじると、ジューシーな鶏肉と濃厚な卵黄が口いっぱいに広がります。
また、「特大エビフライ」は、その名の通り驚きのボリューム。プリプリの海老が2尾も入って、この価格は都内では考えられないコストパフォーマンス。焼き鳥も各種150円からと、財布に優しい価格設定ながら、備長炭で丁寧に焼き上げる本格派。地元の主婦たちが夕飯のおかずを求めて集まる光景は、まさに下町の日常風景そのものです。
お惣菜の店 きく – 天ぷら専門店の隠れた名店
このお店の名物は、なんといっても「紅しょうが天」(150円)。
サクッと揚がった衣の中から、紅しょうがの爽やかな辛味と酸味が広がる独特の味わいは、一度食べたらやみつきに。地元民は「これがないと始まらない」と口を揃えます。
「半熟卵天ぷら」(150円)も見逃せません。絶妙な火加減で揚げられた卵は、黄身がとろりと流れ出す贅沢な一品。天つゆにつけて食べるのもよし、そのまま塩で食べるのもよし。職人の技が光る逸品です。
ベジフル – 主婦で賑わう激安青果店
開店前から主婦の行列ができる「ベジフル」は、新鮮な野菜や果物が驚きの価格で手に入る青果店。季節の野菜が市価の半額以下で購入できることも珍しくありません。特に朝採れ野菜が並ぶ午前中は、地元の主婦たちで店内がごった返します。「今日は大根が安いわよ!」「このトマト、甘くて美味しいわ」といった情報交換も、商店街ならではの光景です。
大勝湯 – 昭和レトロ銭湯で極楽体験
入浴料:550円
昭和の雰囲気をそのまま残す「大勝湯」は、地元民に愛され続ける銭湯です。富士山のペンキ絵、レトロなタイル張り、番台のおばちゃんとの会話など、すべてが昭和にタイムスリップしたかのよう。薬湯や塩湯、水風呂も完備しており、買い物で歩き疲れた体を癒すのに最適。常連客との世間話も楽しみの一つで、「今日は暑いねぇ」なんて言葉を交わしながら、地元の温もりを感じられます。
都電屋Toden Hotel – レトロモダンな新名所
1階のカフェスペースは、なんと実際に使われていた都電の車両シートを使用。
座った瞬間、昭和の都電に乗っているかのような気分に浸れます。メキシカン料理やグルメバーガーなど、商店街では珍しい洋食メニューも充実。
特に「都電バーガー」は、ボリューム満点で若者にも人気。2階は4室限定の宿泊施設になっており、商店街の朝から夜までを体験できる貴重な場所となっています。



2. 夕やけだんだん・谷中銀座商店街 – SNS映え抜群の食べ歩き天国
基本情報
項目 | 詳細 |
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場所 | 東京都台東区谷中3丁目・荒川区西日暮里3丁目 |
特徴 | 全長170m、約60店舗の下町商店街 |
歴史 | 1950年代開業(戦後復興期から形成) |
アクセス | JR「日暮里駅」西口徒歩5分 地下鉄千代田線「千駄木駅」徒歩5分 |
夕やけだんだん | 36段の石階段、高低差4m、夕日絶景スポット |
観光認定 | 「台東区思い出の景観30選」指定 |
特別イベント | 8月:ひゃっこい祭り(氷柱展示、納涼盆踊り) |

必食グルメ&ショップ
後藤の飴 – 大正11年創業の飴細工芸術
営業時間:10:30-19:00(水曜定休)
創業100年を超える「後藤の飴」は、日本の飴文化を今に伝える貴重な存在です。店内に入ると、まるで宝石箱のように美しく並べられた37種類の手作り飴が出迎えてくれます。
名物の「ニッキ飴」は、シナモンの香りが口いっぱいに広がる懐かしい味。一番人気の「ゆず飴」は、国産ゆずの爽やかな香りと甘さのバランスが絶妙で、外国人観光客にも大人気。季節限定の「桜飴」(春)や「かりん飴」(秋)は、日本の四季を感じられる逸品として、お土産にも喜ばれています。
店主が一つ一つ丁寧に作る飴は、まさに職人技の結晶。飴を引く作業を見学できることもあり、その美しい手さばきに見とれてしまいます。
ひみつ堂 – かき氷界のレジェンド店
日光の天然氷を使用した「ひみつ堂」のかき氷は、全国からファンが訪れる逸品です。ふわふわの氷に、自家製シロップがたっぷり。特に人気の「ひみつのいちごみるく」(1,200円)は、完熟いちごの甘酸っぱさと練乳の濃厚さが絶妙にマッチ。
夏場は2時間待ちも珍しくない行列店ですが、その価値は十分。口に入れた瞬間にすっと溶ける天然氷の食感は、一度味わったら忘れられません。季節限定メニューも豊富で、秋には「和栗」、冬には「ほうじ茶」など、一年中楽しめるのも魅力です。
竹工芸 翠屋 – 明治41年創業の職人技
明治から続く「翠屋」は、竹工芸品の専門店。店内には、職人が一つ一つ手作りした花かご、箸、コースター、アクセサリーなどが所狭しと並びます。
特に人気なのが、竹で編まれた「花かご」。繊細な編み目と優美な曲線は、まさに芸術品。外国人観光客には、竹製の箸やコースターが人気で、「Made in Japan」の品質の高さを実感できる逸品です。
店主の職人技を間近で見られることもあり、その手さばきに魅了される人も多数。竹という日本の伝統素材を現代に活かす技術は、まさに匠の技です。
アトリエ ド フロレンティーナ – フロランタン専門店の極み
谷中銀座で異彩を放つ洋菓子店「アトリエ ド フロレンティーナ」は、フロランタン専門店として知られています。定番の7種類や季節ごとのメニューもあり、どれも個性豊か。
定番の「アーモンドフロランタン」は、香ばしいアーモンドとキャラメルの絶妙なハーモニー。「黒ごまフロランタン」は、和と洋が融合した独創的な味わい。季節限定の「桜フロランタン」(春)や「栗フロランタン」(秋)は、発売と同時に売り切れることも。
サクサクのサブレ生地に、たっぷりのナッツとキャラメル。一口かじると、幸せが口いっぱいに広がります。
3. 町屋駅前銀座商店街 – 新旧融合の地域密着型
基本情報
項目 | 詳細 |
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場所 | 町屋駅中心半径100m |
店舗数 | 34店舗 |
歴史 | 創業60年超の老舗から新店舗まで |
アクセス | 京成線・地下鉄千代田線・都電荒川線「町屋駅」直結 |
特徴 | ショッピング、グルメ、医療機関が集約 |
キャッチフレーズ | 「ちょっとまちや」 |
注目の店舗とグルメ
町屋駅前銀座商店街は、「ちょっとまちや」のキャッチフレーズ通り、気軽に立ち寄れる親しみやすさが魅力です。
老舗と新店舗の絶妙なバランス
創業60年を超える老舗の和菓子店では、季節の上生菓子が楽しめます。一方で、若い世代が経営するカフェやベーカリーも点在し、新旧が見事に融合しています。
医療機関も充実した生活密着型
商店街には診療所や薬局も点在し、買い物ついでに健康相談もできる利便性の高さが特徴。地域の高齢者にとっては、なくてはならない存在となっています。
4. 荒川仲町通り商店街 – 三河島のコリアンタウン隣接
基本情報
項目 | 詳細 |
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場所 | JR常磐線三河島駅周辺 |
特徴 | 全長500m、下町情緒溢れる路地 |
アクセス | JR常磐線「三河島駅」徒歩1分 |
周辺情報 | 都内最古のコリアンタウン隣接 |
特色 | 八百屋、肉屋、惣菜店が充実 昭和レトロなモルタルアパート街並み |
多文化が交差する下町の魅力
韓国料理と日本の惣菜が共存
荒川仲町通り商店街の最大の魅力は、日本の下町文化と韓国文化が自然に融合している点です。老舗の八百屋の隣に本格キムチ専門店があり、和牛専門の肉屋の向かいに韓国焼肉店が並ぶ。この多様性こそが、この商店街の個性となっています。
特におすすめなのが、「自家製キムチ」を販売する韓国食材店。白菜キムチはもちろん、カクテキ(大根キムチ)やオイキムチ(きゅうりキムチ)など、韓国の味が楽しめます。日本の惣菜店で購入した唐揚げと一緒に食べるのも、この商店街ならではの楽しみ方です。
昭和レトロな街並みが残る貴重な風景
商店街を歩くと、昭和30〜40年代に建てられたモルタルアパートが今も現役で使われている光景に出会えます。洗濯物がはためく2階建てアパート、路地裏の井戸端会議、夕方になると漂う夕飯の匂い。これらすべてが、失われつつある東京の原風景を今に伝えています。
予算別モデルコース
節約コース(1日2,000円)
午前(9:30-10:30):ジョイフル三ノ輪でスタート
まずは「とりふじ」で朝食用の惣菜を調達。親子メンチ1個と焼き鳥2本。アーケード内のベンチで、できたての惣菜を味わいながら、商店街の朝の活気を感じましょう。
昼(12:00-14:00):谷中銀座で食べ歩き
「後藤の飴」でお土産用のニッキ飴を購入。その後、夕やけだんだんの階段に座って、購入した飴を味わいながら商店街を眺める。SNS映えする写真撮影も忘れずに(無料)。
夕方(16:00-18:00):町屋駅前銀座で締めくくり
地元グルメの食べ歩きで約800円。商店街の夕暮れ時の雰囲気を楽しみながら、一日の締めくくりを。
交通費:都電荒川線1日乗車券:400円
満喫コース(1日5,000円)
午前(9:00-11:00):ジョイフル三ノ輪で朝風呂体験
「とりふじ」で豪華惣菜セット(エビフライ、親子メンチ、焼き鳥など)を購入。その後、「大勝湯」で朝風呂を楽しみ、さっぱりした後に惣菜を堪能。
昼(12:00-15:00):谷中銀座でグルメ三昧
行列必至の「ひみつ堂」でかき氷を味わい、「竹工芸 翠屋」でお土産の竹製品を購入。「後藤の飴」で各種飴の詰め合わせも忘れずに。
夕方(16:00-18:00):荒川仲町通りで多国籍グルメ
韓国料理と日本の惣菜をミックスして楽しむ。キムチと唐揚げの組み合わせは絶品です。
交通費・その他:340円
外国人観光客への特別アドバイス
お得情報&節約のコツ
商店街別の狙い目時間帯
ジョイフル三ノ輪
毎月11日の「弁天セール」は見逃せません。通常価格から更に10〜20%オフになる商品も多数。また、閉店間際の18時頃は、売れ残りの惣菜が値下げされることも。
谷中銀座
平日の午前中(9:00-10:00)は観光客が少なく、ゆっくり買い物や食事が楽しめます。
SNS映えな写真を撮るなら、お店が空いていない早い時間を狙ってみて。
都電荒川線の活用
1日乗車券(400円)を購入すれば、荒川区にある37カ所の全商店街へのアクセスが可能です。3回以上乗車すれば元が取れる計算なので、積極的に活用しましょう。
食べ歩きのコツ
各店舗で少量ずつ購入することで、多彩な味を楽しめます。また、複数人でシェアすれば、更に多くの種類を味わえます。
文化的体験ポイント
店主との会話を楽しむ
商店街の魅力は、店主との会話にあります。「これ、美味しいですか?」「おすすめは?」と聞けば、喜んで教えてくれます。日本語が苦手でも、身振り手振りで十分通じます。
昭和レトロ建築の鑑賞
映画やドラマのロケ地巡りも楽しみの一つ。特に「万引き家族」のロケ地となった場所は、ファンにとって聖地となっています。
銭湯体験で日本文化を満喫
「大勝湯」での銭湯体験は、日本文化を肌で感じられる貴重な機会。ペガサスのペンキ絵を眺めながらの入浴は、まさに日本の原風景です。
職人技の見学
「後藤の飴」の飴作りや「竹工芸 翠屋」の竹細工など、職人の技を間近で見られる機会も。その繊細な手仕事は、見ているだけで感動します。
地域猫との触れ合い
谷中銀座は「猫の街」としても有名。商店街を歩いていると、のんびりと日向ぼっこをする猫たちに出会えます。
SNS映えスポット完全ガイド
夕やけだんだん
36段の階段から見下ろす商店街の風景は、まさに絶景。特に夕暮れ時のオレンジ色に染まる街並みは、インスタ映え間違いなし。
都電荒川線と季節の植物
荒川二丁目停留所から荒川自然公園へとつながるスロープから見下ろす景色は、他では撮れない貴重な一枚に。
ジョイフル三ノ輪アーケード
大正時代から続くアーケードの天井は、歴史を感じさせる重厚な造り。光と影のコントラストが美しい写真が撮れます。
後藤の飴の37種類ディスプレイ
カラフルな飴が並ぶショーケースは、まるで宝石箱のよう。光に透ける飴の美しさは、SNS映え抜群です。
とりふじの惣菜山盛り
ショーケースに並ぶ大量の惣菜は、日本ならではの光景。特に唐揚げの山は圧巻です。
注意点とマナー
営業時間に注意
多くの店舗が19:00頃には閉店します。閉店ぎりぎりの訪問は避けましょう。
定休日の確認
個人経営の店舗は月曜休みが多いです。訪問前に確認することをおすすめします。
現金の準備
カード決済ができない店舗がほとんど。事前に現金を用意しておきましょう。
試食文化の違い
日本では、購入前の試食はあまり一般的ではありません。試食を勧められた時のみいただきましょう。
言語について
基本的に日本語のみの対応ですが、笑顔と身振り手振りで十分コミュニケーションが取れます。スマートフォンの翻訳アプリも活用しましょう。
荒川区商店街巡りの3大メリット
1. 圧倒的コストパフォーマンス
海外の同規模商店街と比較して40-60%安い価格設定は、まさに驚異的。特にジョイフル三ノ輪の惣菜は、海外の屋台価格以下で本格的な手作り料理が楽しめます。とりふじの特大エビフライは、他国では1,000円以上の価値があるボリュームと品質。この価格で、プロの料理人が作る本格的な味を楽しめるのは、荒川区の商店街ならではの魅力です。
2. 映画・ドラマの世界を実体験
「万引き家族」「三匹のおっさん」「男はつらいよ」など、数多くの名作のロケ地となったジョイフル三ノ輪商店街。スクリーンで見た風景が、実際に目の前に広がる感動は格別です。大正時代から続く本物の商店街は、セットでは再現できない本物の生活感と歴史の重みを感じさせてくれます。地元の人々の日常に溶け込みながら、映画の主人公になったような気分を味わえます。
3. 都心からのアクセス抜群
日暮里・上野から都電荒川線で直結、山手線内から30分以内でアクセス可能という立地の良さ。東京観光の合間に気軽に立ち寄れるのが大きな魅力です。1日あれば4つの個性豊かな商店街をすべて巡ることができ、効率的に下町文化を体験できます。浅草・スカイツリーエリアからも近く、東京観光のゴールデンルートに組み込みやすいのもポイントです。
まとめ:今すぐ始める荒川区商店街グルメ旅
都電荒川線1日乗車券(400円)を手に、タイムスリップの旅に出かけましょう。スマートフォンのカメラでは捉えきれない、心に焼き付く思い出と、現代では味わえない人情味あふれる商店街体験があなたを待っています。
100円台から楽しめる絶品グルメ、職人の技が光る伝統工芸品、地元の人々との温かい交流。荒川区の商店街は、お金では買えない価値ある体験の宝庫です。昭和の面影を色濃く残すこれらの商店街で、本物の下町文化と、忘れられない食の記憶を作ってください。
次の週末、あなたも荒川区の商店街で、昭和レトロな食べ歩き天国を満喫してみませんか?